ノヴァスコシア全国講演会感想エントランスへ

ノバスコシア環境政策全国縦断講演会を終えて

鷹取 敦
環境総合研究所調査部長
環境行政改革フォーラム幹事


 私はこれまでノバスコシアの現地視察の機会を得ることは出来なかったが、今回の全国講演招聘プロジェクトの一部をお手伝いし、日本滞在のほぼ全日にわたり講演者お二人と交流しつつ、ノバスコシアの経験を学ぶことが出来た。非常に貴重な機会を得ることが出来たことに感謝している。

 今回の講演を通じて、あらためて(現在も挑戦を続けている)ノバスコシアの経験から学ぶべきものは、成果として示されている政策、施策だけでなく、なによりそこに至ったプロセス、すなわち民主主義のあり方であることを痛感した。

 この全国縦断講演会は、日本に到着当日から2つの台風と1つの低気圧が一緒になった巨大な低気圧の影響を受けてハードなスタートを切った。カナダからの便は成田空港に着陸することが出来ず、羽田空港に着陸し(千歳や関空でなかったのが不幸中の幸いだった)、入国が決定するまで5時間も機内で2人の講演者が待たされたところから始まった。

 成田空港に迎えに行った、池田さんからの連絡で羽田に急行したものの、羽田の小さな国際ターミナルでじっと待つしかなかったのが1月も前のことであるかのように思い出される。当初の予定を変更し、深夜に都内のファミリーレストランで打ち合わせを行った。

 翌日の郡山市(福島県)での講演では、多忙な青山貞一所長(武蔵工業大学環境情報学部教授)の代理として、講演に同行しお手伝いをさせていただいた。講演者のお二人は新幹線から、また郡山に入って車中からはじめてみる日本の田園風景の1つ1つが新鮮だったそうだ。講演には台風の影響もあり会場にたどり着けない参加者もいらっしゃったそうだが、農繁期のもっとも忙しい時期としては、470人という大変大勢の方があつまり会場を埋めた。初日でもあり会場のレイアイト等、多少のとまどいもあったが柔軟に対応しながら講演が進められた。

 終了後に地元で行われた懇親会も含めて、参加者からは非常に熱心な関心と感想を寄せられ、またはじめて日本に滞在したお二人と、カナダからの講演者を迎えた地元の間での密度の濃い交流が行われた。全日の入国時のトラブルと時差からのつかれが取れぬままのお二人ではあったが、とても喜ばれていた。

 日曜日に函館講演に羽田から送り出した後、再び合流したのは軽井沢講演を経たあとに火曜日の夜に環境総合研究所の事務所の屋上で開催されたゴミ弁連(主催団体)の専門家会議だった。

 日本でゼロウェイストに取り組んでいる上勝町のNGOの方やスコットランドから日本に来ている弁護士なども参加され、非常に密度の濃い議論が行われた。(ゴミ問題に限らず)日本で問題になっている談合や利権の問題の背景にあるものが、ノバスコシアとの違いを議論することにより浮かび上がってきた議論でもあった。

 水曜日には、せっかく来日された講師お二人に一息ついていただくことを兼ねて、東京タワー見学、横浜市にあるリサイクル工場の見学、鎌倉観光にお連れした。リサイクル工場ではノバスコシアでこれから拡大生産者責任の制度化に取り組もうとしているボブさんが日本のリサイクルのあり方について熱心に質問され、工場を見学する時間がはじまる以前に白熱した議論が展開された。この議論をつうじて日本の「リサイクル」政策とノバスコシアの政策の根本的な考え方の違いが際だった。

 その後、鎌倉で圓覚寺、鶴岡八幡宮、長谷の大仏をお参りし、日本の文化にふれていただいた。講師お二人は好奇心旺盛で、特に若いボブさんはあらゆることに関心を持たれていたのが印象的だった。

 木曜日は午前中に武蔵工業大学環境情報学部の大規模な公開講義を終えられた講師お二人をカナダ大使館でお迎えし、環境行政改革フォーラムの拡大版Eサロンを開催した。

 これは当初はそれほど大きな規模を予定していなかったが、参加者が日々増えていたため、開催日が近づいた時点で会場を探し回り、最終的にカナダ大使館での開催にこぎ着けた経緯があったが、参加者のみならず大使館の方々も参加者も大いに喜ばれ、質疑も活発に行われた。2003年の最初のノバスコシア環境政策シンポジウムを同じカナダ大使館の大会場で環境総合研究所が大使館と共催して行い、定員を超える参加者であふれたのが思い出された。

 翌日金曜日には羽田空港まで福岡講演会のためにお送りした。函館から東京に戻った際に荷物が出てくるのが遅く、東京から軽井沢に移動するのが大変だったのを教訓に、今回はお二人の大きな荷物を東京で預かることにした。その晩、福岡から大盛況の知らせが届き、歓喜した。

 土曜日にはお二人の荷物を持って羽田に向かい、成田空港まで送り出した。大変な日程ながら最後まで非常な熱意を持って講演に取り組んでくださったボブさんとレイさんのお二人には、講演の内容だけでなく、その暖かいお人柄も含め感銘を受け、心から感謝を申し上げたいと思います。

 各会場での講演会を実現された地域のみなさま、主催したゴミ弁連の廣田次男弁護士、坂本弁護士、事前にゴミ弁連と綿密に協議して全体を采配し、郡山講演に代理として送りだしていただいた青山さん、そしてお二人の講師とともに通訳を含めずっとつきそわれた池田さんに、感謝の意を表したいと思います。